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コラム

2010.05.27
ビアトリクス・ポターが飼ったウサギ

 ビアトリクスがペットとして飼育したウサギは全部で、八匹です。一番最初は10代の前半にスコットランドのダルガイズ・ハウスで飼ったという記録が残っています。しかし、彼女がこのウサギをどのくらいの期間、飼っていたのか、何という名前をつけたのかは、残念ながら分かっていません。

 次にウサギを飼ったのは、24歳頃のこと。一匹は「ジャック・ヘア」と名づけた野ウサギ、もう一匹はロンドンのペットショップで買ったウサギで「ベンジャミン・バウンサー」と名づけられました。絵を描く技術が飛躍的に向上していたビアトリクスは(特に)「ベンジャミン」をモデルにして、たくさんの絵を描きました。しばしばわたしたちが目にするビアトリクスとウサギの写真 ----- スコットランド滞在中、犬用の革ひもをつけ「うさんぽ」している写真のウサギがこのベンジャミンです。

 さらに20代後半には、ロンドン、シェパーズ・ブッシュのアクスブリッジ・ロードにあったペットショップで、生まれて間もないウサギを購入しました。「ピーター・パイパー」と名づけ、家族でバカンスや春の旅行にゆくときには、かならず彼を連れてゆきました。

 27歳のとき、ビアトリクスは昔の家庭教師のアニー・ムーアから、息子のノエルが病気なので、手紙を書いてやってほしいと頼まれます。何を書いたら良いのか分からないので、彼女はこの「ピーター(パイパー)」が登場する絵手紙を書いて送りました。

 この絵手紙が、現在わたしたちが読んでいる『ピーターラビットのおはなし』のもとになるのですが、出版社から刊行される前に、彼女はこの物語を自費出版で出版しています。印刷はロンドンのタワー・ストリートにあるストレンジウェイズ・アンド・サンズという印刷所に依頼しました。1901年のことでした。その翌年、フレデリック・ウォーン社から『ピーターラビットのおはなし』が出版され、ビアトリクスは一躍、ベストセラー作家の仲間入りをすることになるのです。

 39歳のときには「ジョージー」と「モプシー」というウサギを飼っていました。ウィニフレッド・ウォーンという少女に、次のような手紙を送っています。

・・・わたしの二匹のウサギのお話しをするわね。ここ(グウェニノグ)に連れてきているの。名前はジョージーとモプシー。ジョージーはとても可愛いウサギよ。普通の野生のウサギだけれども、とてもおとなしいわ。生け垣のウサギ穴に住んでいたの。わたしの手のひらに座れるくらいの赤ちゃんのときに、ある男の子が捕まえてきたのよ。今はもう三歳になります。

もう一匹のモプシーは、とても若いけれど、おくびょうで、まぬけなの。このまま飼っておくか分からないわ。おそらく森に連れて行って、ウサギ穴に逃がしてあげようと思っています。

 また50歳頃には「ベンジャミン」「カトンテール」と名づけたウサギをペットとして飼っていたという記録が残っています。

 まだ他にもペットとしてビアトリクスが飼っていたウサギはいたかもしれません。その種の資料を見つけたら再度、報告しますが、いつもビアトリクスのウサギが語られるとき「ベンジャミン・バウンサー」と「ピーター・パイパー」だけしか触れられないので、今回はその他のウサギについて紹介してみました。 最後に大急ぎでひと言。前回のブログの写真は、ロンドンのバスカヴィル・ロードとウォンズワース・コモンでした。今回のロンドン・スポットは「ピーター・パイパー」を購入したペットショップがあったシェパーズ・ブッシュのアクスブリッジ・ロードと自費出版の印刷所があったタワー・ストリート(現在、ケンブリッジ・サーカス)です。今やそのペットショップと印刷所は残っていませんが「ビアトリクスはこの通りのショップでウサギを購入したんだなぁ」「このあたりの印刷所で私家版を依頼したんだ」などと感慨深く、たたずみつつ、写真を撮ってきました。(2010年5月7日記す)

アクスブリッジ・ロード
「ピーター・パイパー」を購入したショップがあったアクスブリッジ・ロード

タワー・ストリート
自費出版の印刷所があったタワー・ストリート(現在、ケンブリッジ・サーカス)

河野芳英(大東文化大学・文学部・英米文学科教授)

大東文化大学:ビアトリクス・ポター資料館


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